「【とんちき坊やといるか島の国】」の版間の差分

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(ページの作成:「400px <br/>【とんちき坊やといるか島の国】は、太田剛気の絵物語作品【とんちき坊やとまぬけのろんシリーズ】の作品の一つ。 ==概要== 制作年は2021年。シリーズ第一作【とんちき坊やとなすび王の国】に先立つ、シリーズの試作版として制作された作品である。「絵本的な画風」「歴史の物語ととんちき坊や・まぬけの…」)
(相違点なし)

2022年1月18日 (火) 02:14時点における版

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【とんちき坊やといるか島の国】は、太田剛気の絵物語作品【とんちき坊やとまぬけのろんシリーズ】の作品の一つ。

概要

制作年は2021年。シリーズ第一作【とんちき坊やとなすび王の国】に先立つ、シリーズの試作版として制作された作品である。「絵本的な画風」「歴史の物語ととんちき坊や・まぬけのろんのような愉快なキャラクターたちとの両立」「擬人化・デフォルメされたキャラクター」など、シリーズの雛型となる諸要素がここで誕生した。

あらすじ

今回とんちきとろんがやってきたのは〈イルカ島の国〉。政治・経済の先進国で、観光地としても人気な島国である。 観光を楽しみにしてやってきたとんちきとろんだったが、運悪く滞在中に戒厳令が発されてしまい、観光は中止となってしまう。仕方なく2人(1人と1匹?)は戒厳令の原因を探るべく政府の建物へと向かう。そこでは政府要人たちが事態収拾に向けた会議を重ねており、2人はその行く末を見守ることにした。会議の結果、対立していたいぬ族とかえる族は和睦し、それまでの恩讐を超えた同盟関係樹立の合意に至った。 この歴史的な和睦によって、いぬ族とかえる族の同盟は一躍主流派となり、現政権を率いていたオオサンショウウオ大臣の一派を一斉に追放することに成功する。その後、和睦の合意に基づいていぬ族のポチべえを首班とする大連立内閣が組閣され、政変は決着を見る。 一部始終を見届けたとんちきとろんは、平常化した街でおみやげをたんまりと買いこんでから、次なる目的地へ向かって旅立つのであった。

イルカ島の国

〈列島〉の北部に位置する島国で、列島全域を傘下に治める〈連邦帝国〉の原加盟国の1つ。帝国内でも屈指の経済大国であり、その経済力を背景にして特に〈列島〉北部において絶大な影響力を誇る。 経済力の源泉は、貿易の中継地点としての地理的条件である。〈いるか島の国〉は、古くから〈列島〉内の各地方の海上交易路の中間に位置する島という立地を活かし、寄港地における物流産業で繁栄してきた。そこから、貿易を統括する総合商社などが成長し、経済大国としての基盤が醸成されていった。 また、こうした背景は島民の多民族化を促進した。さまざまな貿易船が寄港することによって民族同士の交流が活発になり、やがて土着する島外の民族も現れるようになったことで、従来のいるか島先住の民族(主にかえる族など)と島外からやってきた民族(主にいぬ族)が共存する環境が形成された。このことから、〈いるか島の国〉は〈列島〉内では珍しい多民族国家となっている。 活発な交易による多民族化は、さらに交易を促進するという好循環を生み出し、〈いるか島の国〉の一層の経済発展の理由となった。 島は上空から見るといるかのような形をしており、これが島名および国名の由来となっている。島は大きく3つのエリアに分けられており、港湾エリア・大農園エリア・居住エリアがそれぞれ存在する。港湾エリアは、主要産業である貿易業および輸出品を生産する工場が林立する工業地帯になっている。大農園エリアは、寄港する船へ供給する食糧の生産を目的に整備された農業地帯である。居住エリアは、その名の通り島民の生活空間が集中する居住地帯となっている。作中では、とんちきとろんはこの大農園エリアにのみ観光することができた。 人口の約90%は動物系の民族で、その90%の内、かえる族・いぬ族・さかな族・とり族の上位4民族だけで人口分布の約70%を占めている。すべての民族がみな友好的に暮らしているというわけではなく、特にかえる族といぬ族の対立感情に代表されるように、民族間における複雑な感情が潜在的な社会問題として認識されている。

登場人物

とんちき坊や

個別記事を参照。

まぬけのろん

個別記事を参照。

オオサンショウウオ大臣

とんちきとろんがやってきた時点での〈いるか島の国〉の首相。一連の政変の結果、失脚する。 国民からの人気は非常に低いが、かえる族といぬ族の対立の間隙を突いて政権を獲得して以来少数勢力を巧みに取り込みながら政権運営を続けており、物語冒頭の時点ですでに5年に及ぶ長期政権を築いていた。作中で発されていた戒厳令は、オオサンショウウオ大臣がかえる族といぬ族の主流派を排除する目的で仕掛けた政局であったが、結果的にはこれが裏目に出てしまい、自身の失脚へとつながってしまった。

文左衛門

いぬ族の政治家を統率する派閥の領袖。作中では、かえる族の領袖・喜久麿との和睦・〈ワンケロ講堂の和睦〉を成立させた。 政界を裏から支配する「いぬ族のドン」と呼ばれる存在であったが、オオサンショウウオ政権の成立以降は在野の実力者に甘んじていた。オオサンショウウオ大臣が、偶発的に発生した政変(農園門の変)に乗じて戒厳令を発したことを利用し、どさくさに紛れて政権奪還を企図したかえる族との和睦に乗り出した。 その後、文左衛門はかえる族との連携によってオオサンショウウオ政権を退陣に追い込んだ立役者となったが、自らは影の首相として裏から政治を支配する道を選び、自身子飼いのポチベエを後継首相に推薦した。

喜久麿

かえる派の領袖。文左衛門の要請に応え、いぬ族との歴史的な和睦を実現した。 〈いるか島の国〉では当時徐々にかえる族の人口比率が減少しており、喜久麿はかえる族の影響力の確保をいかに成すかを悩んでいたが、そこへ文左衛門からの和睦の申し出があったことでいぬ族との同盟に活路を見出し、和睦を決断するに至った。 政治的な野心はあまりなく、国家の繁栄を第一に考える滅私の精神の持ち主。他民族との共生には積極的であるものの、〈いるか島の国〉の原住民というアイデンティティーを抱えるかえる族の領袖として、かえる族の不利になるような安易な妥協はしない芯の通った政治家である。

ポチベエ

文左衛門の懐刀で、いぬ派の実力者。一連の政変ののち、オオサンショウウオ大臣の後継首相に就任する。 文左衛門と喜久麿による会談を水面下で調整するなど元は裏方の仕事で力を発揮するタイプであったが、文左衛門の指示によって首相の座に就いた。首相としてはただ文左衛門の傀儡になることには抵抗し、自らの内閣に「新時代内閣」と名付けるなど独自性を模索する動きを見せた。

なまずの守

いぬ派とかえる派の秘密会談を仲介した貴族。

いぬ派の幹事長

ワンケロ講堂の和睦の事前交渉を担った政治家。『会談』で描かれているいぬ族。

かえる派の大番頭

ワンケロ講堂の和睦の事前交渉を担った政治家。『会談』で描かれているかえる族。

ぶた百姓のおやじ・おかみさん

大農園エリアに観光できたとんちきとろんに農作物を振舞ってくれたぶた族の夫婦。『農村』で描かれている。


作中の出来事

農園門の変

とんちきとろんが〈いるか島の国〉にやってきた最初の夜に遭遇した、いぬ族の派閥とかえる族の派閥の兵士同士による偶発的な武力衝突。実際にはただの些細なケンカであったのだが、かえる族といぬ族の影響力を落としたいオオサンショウウオ大臣がこのケンカの発生をあえて大事の様に発表し、無理矢理に戒厳令発令の根拠としてしまった。戒厳令発令のねらいは、いぬ族とかえる族の排除である。

ワンケロ講堂の和睦

かえる族といぬ族の間で成立した和睦合意の通称。〈イルカ島の国〉湾岸エリアにあるワンケロ講堂で結ばれたためにこの名がつけられた。 農園門の変に端を発した戒厳令発令によって、かえる族といぬ族の政治家は実力行使によって政界から追放される恐れを抱いた。現政権であるオオサンショウウオ政権は少数与党体制であるため、議会多数派(ただし、過半数は割っている)を形成するかえる族派といぬ族派が失脚すれば、現政権はさらに盤石になるためである。かえる族といぬ族は、少なくとも政界では対立関係にあり歴史的に政治抗争を繰り返してきたが、現下の緊急事態においては一致団結して現政権へ対抗する必要性が生じた。 そこで、いぬ族派の領袖である文左衛門はかえる族派の領袖である喜久麿に対して、反オオサンショウウオ政権という共通の目的を媒介にして両派の同盟関係樹立を提案する。水面下での事前交渉の末に同盟樹立の合意に達した両者は、ワンケロ講堂にて合意文書の署名式典を合同で行い、マスコミを会場に入れて両派の和睦を大々的に喧伝した。この際、文左衛門と喜久麿が笑顔で握手をするという一幕があり、これは多分にパフォーマンス的な意味合いも強かったが、この様子がテレビに映されたことで世論は一気にいぬ族・かえる族同盟への期待感が盛り上がった。 この式典は結果として一連の政変の分水嶺となり、オオサンショウウオ政権崩壊の実質的なきっかけとなった。

オオサンショウウオ大臣の失脚

ワンケロ講堂の和睦によって議会を掌握したかえる族といぬ族の同盟は、臨時招集された議会においてオオサンショウウオ大臣の戒厳令発令に対する内乱罪の適用を可決した。これにより、政権の法的正当性は失われてオオサンショウウオ大臣は更迭された。それから間もなく、オオサンショウウオ大臣は憲兵によって逮捕され、名実ともに失脚する。 以上の流れは、ワンケロ講堂の和睦からわずかに数時間の間に実行に移された。さらに、オオサンショウウオ大臣の逮捕は、直前になってオオサンショウウオ邸周辺の住民に告知されたために、歴史的瞬間を目撃しようと集まった群衆に囲まれる形で大々的に行われた。これらの一連のいぬ族・かえる族同盟の動きは、翌日の新聞の朝刊にも「電光石火」と形容されるほど鮮やかなものであったが、一方でそのあまりの手際に良さから「すべて(農園門の変以降の政局全般)は文左衛門の策略だったのでは」という疑惑も生まれた。 このオオサンショウウオ大臣の失脚後、後継首相にはいぬ族のポチベエが就任し、オオサンショウウオ一派に代わっていぬ族・かえる族の同盟が主流派となる新政権が誕生した。

関連項目

【とんちき坊やとまぬけのろんシリーズ】