【とんちき坊やとかえるの街・ケロケロ】
【とんちき坊やとかえるの街・ケロケロ】は、太田剛気の絵物語作品【とんちき坊やとまぬけのろんシリーズ】の作品の一つ。制作年は2022年~2023年。シリーズ第2作目にあたる。
概要
本作は、16点の絵画作品と各作品に描かれた歴史的出来事を解説する文章で構成されている。この絵画と文章は、本形式の作品『とんちき坊やとかえるの街・ケロケロ 絵画で楽しむケロケロ200年の歴史』(以下、『ケロケロ200年の歴史』)にまとめられている。前作【とんちき坊やとなすび王の国】とは違い、絵本形式ではなく絵画そのもので歴史の流れを表現する叙事詩的な作品形式を採っている。そのため、主役であるとんちき坊やとまぬけのろんも作中の出来事にどのように関わったのかは具体的な物語としては明示されておらず、代わりにかえるの街・ケロケロの歴史的な出来事を「見届ける」役割を担っている。
絵画による叙事詩的な作品というアイデアの源となったのは、アルフォンス・ミュシャの作品『スラブ叙事詩』である。作者の太田は、スラブ叙事詩による歴史をモチーフとした作品表現を、かわいい絵柄でデフォルメして表現することを模索して本作を制作したと語っている。本作では、困難な時代からはじまって繁栄の未来へとつながる民族の歴史が、連作絵画の形式で表現されている。
かえるの街・ケロケロ
詳細はかえるの街・ケロケロを参照。
〈ケロケロ〉は、本作の舞台となった都市国家である。元々は〈かえる帝国〉から追放されたケロケロ系かえる族の政治難民たちがケロケロ島に定住して成立した共同体であったが、やがて貿易都市として国際社会に台頭し、成立からおよそ200年ほどで列強国家の一角となるまでに成長した。成立当初は、創設者であるケロケロ教の聖職者・ケロルスとその弟子を中心にした宗教国家であったが、彼/彼女らがこの世を去って以降は一部の時期を除いて市長を中心とする共和制の政体を採用している。
領土はケロケロ島とその周辺の島嶼部のみであり、ケロケロ島には国内唯一の都市であるケロケロ市が存在する。ケロケロ市は世界有数の貿易港であるケロケロ港を抱えており、このケロケロ港の繁栄がケロケロの経済大国としての地位を支えている。当初は中継貿易を中心とする経済構造であったが、後年にはケロケロ市場が開かれて世界中の物品を取引する巨大市場に発展した。
文化面ではケロケロ教の影響を強く受けており、ケロケロ島内にはケロケロ山やケロケロ神殿などの宗教上の聖地が存在する。毎年恒例の収穫祭は宗教的な祭祀であると同時にケロケロ市民にとっての最大の娯楽の1つであり、例年国中をあげて盛大に開催されている。市民のほぼ全員がケロケロ教を信仰しており、日常生活の細かな所に至るまでケロケロ教の教えが浸透している。
作中の主な出来事
詳細は歴史を参照。
ケロルスの宣言
ケロルスの宣言とは、ケロケロの創設者・大司教ケロルスが発したケロケロ建国の理念、およびそれを発したことそのものを指す歴史用語である。かえる暦375年、ケロルスを中心とする難民たちがケロケロ島に到着した際に発された。この宣言はケロケロについて、①ケロケロ教を信仰する人たちのための街であること、②階級のない平等な社会であること、③市民が共同してつくりあげる街であることの3つを定めている。ケロケロという都市国家の基礎をなす理念であり、この宣言が発された日を以てケロケロ建国の日であるとされている。
ケロケロ法典の発布
ケロルスとその弟子たちが亡くなった後、選挙で選ばれた市議会議員とその首班である市長がケロケロを治める第一期市長制度時代がはじまった。その初代市長に就任したケロティウスは、それまでのケロケロの慣習や統治についてのルールを明文化させたケロケロ法典を制定した。それまでのケロケロ教の教えを法律として街を運営していた時代から、法治主義に基づく統治へと切り替わったという意味で、ケロケロ法典制定はケロケロの歴史において重要な意味を持つ出来事となった。
ケロトカ戦争
トカゲ海賊団がケロケロ島へと襲来したことで勃発した、ケロケロ史上初の対外戦争。この戦いをきっかけにしてケロケロは海軍力を整え、自力で国土を防衛する能力を獲得した。戦いはケロケロの勝利で終わり、ケロケロの国際的な地位も向上した。
王政期
ケロトカ戦争終結後、ケロケロでは商船団(海軍)を掌握したケロンが王政の開始を宣言し、ケロウィルムを称してケロケロ王国の建国を宣言した。当初こそ国王による統治は好評であったが、やがて強権的な王政への反発が強まり、ケロケロ革命によって元の共和制へと戻った。
かえる同盟の成立
ケロケロが他国と本格的な同盟関係を結び、領域国家へと発展するきっかけとなった出来事。経済力と軍事力が成長した結果ケロケロは大陸東部の地域大国となって、名実ともに列強としての地位を確立した。ケロルスの宣言からちょうど200周年にあたる年の出来事である。
発表
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