〈なすび王の国〉の政治

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<なすび王の国>の政治では、【とんちき坊やとなすび王の国】に登場した時期を中心にして<なすび王の国>の政治体制について解説する。

<なすび王の国>は<連邦帝国>加盟国家の一つであり、その他の加盟国と同様に<連邦帝国>皇帝による冊封を受けた国王が統治する封建国家である。国制は立憲君主制を採用しているが、君主の権限は儀礼的なものに限定されていて、実際の国家統治は三権を司る機関が担っている。三権は、議院内閣制に基づく行政府(内閣)と立法府(なすび議会)、そして独立した司法府(なすび裁判所)によって構成されている。

【とんちき坊やとなすび王の国】の冒頭時点では<第二憲法>が発効中であり、赤なすび党と青なすび党の二大政党制が成立していたが、同作終盤で起きた<王太子のクーデター>によって政治体制は国王親政による<第三憲法>の時代へと移行した。

主権

<なすび王の国>の主権は<連邦帝国>皇帝に属している。制度上は、<なすび王の国>は同国の国王が<連邦帝国>皇帝の主権を<なすび半島>の地域でのみ代行しているという形式を採っている[1]。冊封を受けたものが行使できる代行権は、封じられた領域内のみにおける①民生に対しての行政、②徴税、③社会基盤整備、④治安維持と、<連邦帝国>域内(および連邦の加盟国同士)のみにおける①外交、②通商、③儀礼的社交、およびそれらを維持するための財政管理全般に限られる。<連邦帝国>加盟国以外の外国との外交や通貨・度量衡・郵便およびいかなる対外的軍事行動を発動することは認められていない[2]

このことから、<なすび王の国>の国王は君主であるが主権者ではなく、法律上は<連邦帝国>を構成する各地域の地方自治担当長官の一人に過ぎないと位置づけることができる。ただし、歴史的経緯から<連邦帝国>の加盟国の自治権は独立国家と比べても遜色がないほどに強大であり、<連邦帝国>中央政府でさえも加盟国の内政には軽々に介入することができないため、実質的には主権代行者は冊封を受けた当該国における実質的な主権者と言って差し支えない。

憲法

<なすび王の国>は立憲君主制を採用しており、【とんちき坊やとなすび王の国】(以下、【なすび王の国】)冒頭時点における<なすび王の国>の現行憲法は<第二憲法>である。また、【なすび王の国】の終盤で発生した<王太子のクーデター>の結果成立した新政権の下で、<第三憲法>が制定されている。

<第一憲法>は、近代的憲法というよりも王権の制限に焦点をあてた法であったことから、のちの〈第二憲法〉以降の憲法とは性質が異なる。国家統治の原則を定めるという近代的憲法という意味での最初の憲法は<第二憲法>である。<第二憲法>以降の憲法に共通する特徴は以下の様にまとめることができる。

・王権の規定
・法治主義
・議院内閣制
・民族平等

これらは「なすび憲法の四大原則」と呼ばれている。

王権の規定は、文字通り<なすび王の国>国王が持つ権能についての規定であり、細かな条項は時代によって異なるものの、原則として国王の権限を①対外的に国家および国民を代表する権利、②三権を執行する機関を統率し、それらの機関から報告を受ける権利、③祭祀を司る権利の3つに制限している。特に注意が必要なのが②の権利で、これには三権を執行する権利は含まれていない。すなわち国王には、国家統治に関する実際的な行為を行うことは認められておらず、国王の役割は儀礼的なものに限定されているということである。

法治主義は、前時代における国王専制体制からの脱却を明示するための条項である。専制君主および一部の特権貴族による政治の独占を排し、法律に基づく国家統治を行うことを定めている。憲法を国家の最高法規に定めて、あらゆる法律の上位概念として憲法を運用することを明確にしている。同時に、憲法に違反する行政・立法・司法を行為することを禁じている。

議院内閣制は、立法府が行政府の長(総理大臣・首相)を選出し、行政府の長が立法府に対して責任を負うという「議会主義・責任内閣制」について定義している。この原則では、立法府の設置・議員の選挙・議会の招集・総理大臣の選出・行政府と立法府の関係性について厳格に規定されており、先述の王権の規定・法治主義と合わせて権力の独占的な行使を防ぐための原則が示されている。

民族平等は、多様な野菜系民族の国民を擁する<なすび王の国>の事情を反映した原則であり、民族的な出自の違いによって社会的な待遇を差別することを禁じている。このような民族的差別を禁止する原則を憲法によって規定することは、少なくともなす暦1世紀中期ごろまでの<連邦帝国>加盟国としては画期的なことであった。しかし、現実的にはなす族が他民族に対して優越した社会的地位を得ているという状況は憲政施行後も変わらず、民族平等という理想的な原則が国民の常識として浸透することは、赤青二大政党制が崩壊しなすび族以外の民族が台頭するまで待たなければならなかった。

上記の四大原則のほか、<第二憲法>以降は段階的に人権に関する条項も設けられた。基本的人権はなす暦60年ごろまでにはほぼ完全に整備され、同90年代には環境に関する権利という当時としては画期的な条文も修正憲法という形で憲法に加えられた。元々は国王や貴族の権力を制限する目的でつくられた憲法は、漸進的に国家国民のあり方をも規定する性質のものへと変化していった。

三権

<なすび王の国>の三権の源は国王にあるが、実際に三権を行使しているのは国王ではなく以下の諸機関である。

・立法府:なすび議会
・行政府:なすび内閣
・司法府:なすび裁判所

立法府は行政府の長を選出する権利を持ち、行政府は司法府の人事について可否を判断する権利を持ち、司法府は立法府の定めた法律について監視する権利を持っている。これはそれぞれが三すくみの関係になっており、憲政施行以来、法治国家の基本原理として機能している。

立法府

立法府は一院制で、任期は5年。内閣の助言に基づいた国王の裁可による解散がある。定員は時代によって異なるもののおよそ100人前後である。議員は18歳以上の国民による単純小選挙区制普通選挙によって選出される。ただし、被選挙権については制約があり、なす暦50年以降は50年普通選挙法と50年政党法に基づいて、一定条件を満たした政党の党員のみが出馬できる仕組みになっていた。この2つの法律はなすび族がほかの民族に対して有利になるように設定されており、なすび族以外の民族の者も被選挙権を得るだけであれば比較的容易であるが、当選を果たそうとすればなすび族に対して相当に不利な条件で選挙戦を戦うことを強いられる内容になっていた。このことは何度となく違憲であるという批判があがったが、<第三憲法>が施行されるまで改められることはなかった。

立法府の権限は強く、行政府の長の信任か不信任・法律の制定と公布・国家予算の編成・<連邦帝国>議会へ派遣する代表団の指名・条約の承認と批准などが認められている。原則としてなすび議会議員総選挙が施行されてから1ヶ月以内に議員が召集され、国王の開会宣言によって会期がはじまる。任期満了か解散されるまでを1期と数え、通常は8月から9月までの夏季休暇を挟んで通年で議論が行われる。議事は政党制を前提とした運用がなされており、与党院内幹事長と野党院内幹事長が儀礼的な役職であるなすび議会議長とともに議会運営に当たる。法案の議決は本会議にて行われるが、法案の審議は小会議と呼ばれる数名から数十名の委員からなる委員会で本会議の議決に先立って行われ、ここでの議論を経た法案だけが本会議の議題に上げられる。なすび議会の特有の制度としては国家予算の決済に関する審議・監督を行う機関が豊富であることが挙げられる。

行政府

行政府は、長たる総理大臣が組織したなすび内閣によって構成されている。内閣の構成員である大臣の人事は総理大臣の専権事項であり、任命された大臣はそれぞれ1つないし2つの担当省庁を受け持ち、総理大臣を補佐する。総理大臣は各大臣を通じて各省庁を指揮・監督し、行政を遂行する。国家の重要行政を担う省庁は一級省庁と呼ばれており、一級省庁にのみ大臣が充てられる。【とんちき坊やとなすび王の国】に登場した時点で存在する一級省庁は以下のとおりである。

・内閣:総理大臣が所管する行政府全体の司令部。
 →内閣官房:制度上は内閣の外局であり、内閣官房長官(大臣待遇)が所管する。省庁間の調整を担う。
・法務省:法務大臣が所管する、司法行政全般を担う。
・内務省:内務大臣が所管する、民生・土木・建設・労働・教育・祭祀に関する行政を担う。
 →農務庁:内務省の外局だが、農務大臣が所管する。農政全般を担当する。
 →産業庁:内務省の外局だが、産業大臣が所管する。農業を除く産業政策全般を担当する。
・外務省:外務大臣が所管する、外交・貿易・<連邦帝国>に関する行政全般を担う。
・財務省:財務大臣が所管する、財政・金融に関する行政を担う。
・国防省:国防大臣が所管する、<連邦帝国>軍関連事務・軍備に関する行政を担う。
・公安省:公安大臣が所管する、国内治安維持に関する行政を担う。
 →警察庁:公安省の外局だが、警察庁長官(大臣待遇)が所管する。警察行政全般を担う。

一級省庁の下部には下級省庁が設置されており、官僚が日常の行政事務を行っている。また、特別省庁と呼ばれる特殊な省庁が存在し、それらの省庁は内閣(総理大臣の管轄の意。行政府ではない)の管轄の外に設置されている。具体的には、王族に関するすべての行政を担う王宮院(王宮院総裁が所管)や、検察行政を担う検察庁(検察庁長官が所管)などが存在している。

総理大臣に任期は存在しないが、議会の信任を根拠に成立する責任内閣制の仕組み上、議会の任期(最大で5年)が事実上の任期である。内閣の構成員は、通常は議会最大勢力に所属する議員の中から選ばれることが慣例となっているが、法的にはすべての大臣(総理大臣も含む)が民間人から登用されることも可能である。総理大臣は議会の信任を根拠として就任することから、議会の信任を得られない場合には辞任か議会の解散で対抗することができる。総理大臣による議会の解散は、歴史的経緯から、国王への助言を経て国王が散会を宣言することによって行われることになっている。ただし、いかなる場合もこうした権力を行使できるわけではなく、総理大臣自身の政権基盤である与党内で権力闘争が激化した場合などに、総理大臣が自発的に辞任に追い込まれるケースなども存在する。

司法府

司法府は、なすび裁判所が司る。法の番人として、刑事・民事の裁判を担当するほか、議会の立法を審査する違憲立法審査院や、民族間の法的な問題を扱う民族裁判所も備えている(制度上はなすび裁判所の外局扱い)。長はなすび裁判所長官で、任期は最大10年。なすび裁判所は、その内部で上位の上級裁判所と下位の一般裁判所に分かれており、刑事・民事を問わず裁判が始まると、第一審と第二審が一般裁判所で、第三審のみが上級裁判所で行われるという三審制を採用している。上級裁判所の裁判官人事のみ内閣の承認が必要となる。

他の三権に比べると司法府はその権力が弱く規定されているが、これは憲政施行以前の司法権が貴族に委ねられており、憲政施行の過程で旧時代の権力者である貴族の権力基盤が殊更弱体化させられたことに起因している。なす暦38年の憲政開始以来、違憲立法審査権が行使されたのが1度しかないことからも、こうした権力基盤の弱さを見てとることができる。

政党

 詳しくは<赤青二大政党制>を参照。

立法府の項でも述べた通り、<なすび王の国>の議会政治は政党を前提にして運用されている。憲政期のほとんどの期間は、なすび族の赤なすびたちによる赤なす党と青なすびたちによる青なす党が交互に政権を担当しあう<赤青二大政党制>と呼ばれる体制が形成されていた。ただし、二大政党制とは言うものの赤なす党・青なす党のいずれかが議会の過半数を占めた期間はごく僅かであり、ほとんどの政権が中・小規模の政党との連立によって維持されていた。そういった意味で、厳密には二大政党制ではなく多党制と呼ぶべき政権運営が続いていたが、僅かな例外を除いて総理大臣はすべて赤青両党のいずれかから輩出されていたことから、慣例的に二大政党制と呼ばれている。

地方行政

<なすび王の国>の地方行政は、州と呼ばれる6つの地方自治体と1つの特別行政区(首都)によって運営された。これらの自治体の領域の画定は、<なすび王の国>建国以前に存在した6つのやさい系民族国家同士の国境をほぼそのまま用いて行われている。以下は、州の一覧である。

・なすごん特別行政区 首都。旧なすごん王国首都。
・なすび州 州都はなすごん特別行政区。かつて旧なすごん王国を中心とするなすび同盟加盟国が存在した領域。
・にんじん州 州都はキャロットタウン。かつてにんじん国が存在した領域。
・もろこし州 州都はもろもろ。かつてもろこし王国が存在した領域。
・おいも州 州都はいももん。かつていも連合が存在した領域。
・ねぎ州 州都はおねぎん。かつてねぎもの同盟が存在した領域。
・みどり州 州都はだいこんシティ。かつてだいこん同盟が存在した領域。

元々は別々の野菜系民族国家が合同して<なすび王の国>が成立した経緯もあり、各州の自治権は中央集権国家としては比較的強い傾向にあったが、立憲政治が定着していく過程で徐々にその権力が弱体化され、<第二憲法>施行のころには州の権限は強い制限を受けるようになった。州政府は域内の民生・土木・建設・労働・教育・祭祀に関する行政について責任を負っているが、職掌分野からもわかるように中央政府の内務省と所管業務が重複しており、そのため各州政府は内務省の実質的な外局のような存在として扱われている。

脚注

  1. この代行権を委譲する手続きが、<連邦帝国>における冊封である。
  2. 各加盟国に認められる軍備は、治安維持に必要なものに限られている。ただし、<連邦帝国条約>では「自営に必要な最低限度の軍事行動」は認められると定められており、またこれを達成するための「必要最低限の」対外用の軍備の保有は認められるとされている。そのため、この制度を恣意的に利用して軍事行動を起こす事件が<連邦帝国>ではたびたび発生している。

関連項目

【とんちき坊やとなすび王の国】
なすび王の国